イタリア
弦楽器の聖地「クレモナ」へ。(5月17日/出発から36日目)
クレモナといえば、かのストラディバリを始め、数々の名匠たちを輩出した、いわば弦楽器の聖地。そう、いちおー、"チェリスト"の私にとっては押さえておかねばならないポイントだ。私の使用しているチェロの弓も、このクレモナからはるばる日本へやってきた。フランス製の弓だが、クレモナの展示会で楽器屋さんが手に入れたものだという。
弦楽器と言えば非常に高価なものだが、実はこの弓というのも意外に高価なものだ。楽器本体の1/4~1/2が目安、つまり、100万円の楽器であれば、25~50万の弓が相場だというのだから、普通の人は結構ビックリするだろう。あんな棒に一体何の価値があろうかと・・・。
あんな棒っきれだが、やはり値段のはるものは断然良い。音と弾き具合が全く違うのだ。良い楽器は音色も違うというのはきっとみなさんもお分かりになると思うのだが、弓だけでも実はびっくりするほど違いがある。弓にも個性があって、柔らかいモノ、硬いモノ、それぞれバランスが微妙に違うし、音色も異なるのだがら不思議だ。
良い弓を手にしたときは、まるで自分がうまくなったかのような錯覚に陥ってしまう。それほど弦楽器は弓にしろ楽器本体にしろ、その材質、ニス、バランス、そして仕上げ、それぞれが複雑にからみあって作り上げられる非常にデリケートなシロモノなのだ。
その最高峰がみなさんもご存じのストラディバリ。17世紀後半の巨匠で、その価値はプライスレス、300年以上を経てもなお、世界最高峰。彼は最高の楽器を作り出しただけではなく、弦楽器を現在の形に進化させた人物でもある。
そんな彼の、世界最高峰の絶妙なバランスの設計図が、このクレモナにあるストラディヴァリアーノ博物館にあった。弦楽器の表に開いているf字型の穴を「f字孔」と呼ぶが、その型や、弦を支える駒の型まで展示してあり、弦楽器奏者としては非常に興味深い。この型紙で(ほんとに型紙!)あの名器を作り上げたのか・・・!!とあれこれ想像して楽しくなった。
楽器は見るものではなく、弾くモノ・聴くモノなので、楽器に余り興味が無い方にはあまりおもしろいのもではないかもしれないが、ここには他ではお目にかかれないような美しい象眼が施された楽器や、本体側面に唐草模様の描かれた優美なバイオリンなども展示してある。クレモナの町自体もこぢんまりとしており、駅から歩いて回れる範囲に見所が集中している。ミラノから列車で1時間~1.5時間なので、ちょっと足を延ばしてみるのはどうだろう。
クレモナでも、今晩コンサートがあるとのことだったが、夜9時からの開催。残念ながらヴェローナに帰らねばならなかったので、それを聴くことは叶わなかった。クレモナで弦楽4重奏でも聴けたら最高だったのだけど・・・!!
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