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やってきました、温泉湖!!
温泉湖、と聞いてどんなイメージが思い浮かぶだろうか。いや、きっと簡単には浮かばないに違いない!!
私は話のネタになるような「変わった温泉」が大好き。過去にはアフリカの「灼熱地獄温泉」、アイスランドの「地球の割れ目温泉」など、風変わりな温泉体験が多い。「温泉湖」と聞いてイメージがわかないのは私も一緒。こりゃ行かなきゃ!!と、次の訪問地に選んだのだった。
ハンガリーは前回触れたように、ヨーロッパ有数の温泉大国。
首都ブダペストだけで50近くの温泉があり、旅行者も気軽に入れるのが特徴だ。
そのブダペストから南西へ、列車で3時間。ケストヘイという駅からさらにバスに揺られること20分で、その温泉湖がある街、ヘーヴィーズへたどり着く。
私が入った中で最も大きかった温泉は、アイスランドの「ブルーラグーン」温泉。しかし、この温泉湖、それより遙かにでかかった・・・。
この温泉湖は、何と世界第二位の大きさを誇る。一日8600万リットルのお湯が沸き、水温は32度、冬でも26度程度に保たれるのだという。
紫色の美しい睡蓮、緑がかった温泉湖には小魚が泳ぎ、何とも不思議な世界。
浮き輪を借りて(水深最大36m!)一時間ほど浮いていたが、温度がぬるいのでちょうどいい。施設も充実していて、ロッカーやシャワーも完備、浮き輪に水着、キャビンも貸し出している。さらに各種マッサージも受け付けていて、一日遊べるスパワールドといったカンジだ。
温泉湖はぬるいが、館内の一部に湖を仕切った枠があり、その中は37度くらいで暖かい。日本のように「熱い」温泉ではないけれど、一日中浸かったりのんびりしたりするには良い温度だ。
温泉湖のゲート前にバス停があり、その周囲にレストランやホテル、お土産屋さんなどが軒を連ね、温泉帰りにアイスクリームを食べ歩きしながらお土産を見るというのが、湯治客の常のよう。
28時間で全ての湖水が入れ替わるという、ハンガリーの温泉湖。
ブダペストの喧噪に疲れちゃった時は、ちょっと足を延ばすのもいい。
ツイていないことが続くと、方向転換することにしている。
一回目は我慢、二回目で「あれ・・・?」と思い、三回目で見切りを付ける。
これが私のやり方。きっと何か、見えない力が「こっちには行ってはいけない」「そっちへ行ってもロクなことはない」と教えてくれているのだ、と思うことにしている。
本当は、今日ウィーンへ戻るはずだった。
本日、世界のオザワ指揮によるウィーンフィルのコンサートがあったのだ。ここまではまぁ、いいんだけど、共演が!!
何とロストロポービッチである!!
え、誰、それ??というカンジかもしれないが、チェリストならみんな知ってる、世界を代表するチェリストなのだ!
そんなスゴイ演奏会があることを、ウィーンを訪れたときに知り、即チケットを買いに走った。しかし残念なことに、立ち見席しか残されておらず、泣く泣くそれを購入したのだった。
それでも私の心は躍っていた。だってロストロポービッチの生演奏!!しかもウィーンフィル!!そしてオザワ指揮!!
予定では前日にウィーン行きのチケットを買い、今日ウィーンへ移動、コンサートが終わったらスロヴァキアのブラチスラバへ移動するハズだった。一日でコンサートのためだけに、三ヶ国をまたぐことになっていたのだ。
ところが。
(1)チケット売り場で前日にチケットを買えなかった(パスポート不携帯だった為)。
(2)情報収集&ブログアップの為に、インターネットカフェへ行ったら土曜日だったのですでに閉まっていた。
(3)ホッロークーへ行ったことでヘトヘト、翌朝6:00発の列車に乗る自信が消え失せた。
「明日は移動が多いからブログアップできないし、今日中にがんばろう」と、眠たい目をこすりながら、疲れた身体にむち打って原稿を書き上げ、「これで寝れる・・・」とネットカフェに向かったのに、すでにお店は終了。
朝6:00の列車に乗るためには、30分前には切符売り場にいたいから4:30には家をでなきゃ。っていうか、バスとかあるんだろうか。もうすっかり夜中、これからパッキングして、一体何時間寝られるんだ??
と考えたら、あまりに無謀に思えてきた・・・。
だいたい、ツイていないことが3つ以上重なっている。
「ウィーンに行っても、きっと寝不足でスリにあっちゃったり、何かイヤなことがあるに違いない!」と仕方なく自分に言い聞かせ、方向転換を計る。しばらくガイドブックとトーマスクックの時刻表を熟読・・・。
「そうだ!温泉湖へいっちゃおう!」
さっきまでスロヴァキアのブラチスラバについて調べていたのに、それらは全て水の泡。というわけで、予定していたスロヴァキアはスキップ。
そんなワケで、温泉湖へ・・・!
女一人旅はまだまだ続く。
ブダペストからスロヴァキア国境を目指し北上すること100km。
そこに、世界遺産に登録されている村、ホッロークーがある。
バスの時刻を調べたら一日一便。8:30にブダペストを出て、10:30着。帰りは16:00のバスでホッロークー村を出発、18:00にブダペストへ戻ってくることが出来る。
一日一便か・・・。逃したら現地で一泊せねばならない。結構危険だ。世界遺産の村だしブダペストからツアーが出ているのではと調べたが、そんなものはないらしい。あんまり便数が少ないので躊躇したが、まぁ逃したら逃したで何とかなるだろう、と行くことに決めた。
行くまではホッロークーをバスが通り過ぎちゃったらどうしようとか、いろいろ不安材料もあったのだが、行ってみて正解だった。それはそれは、かわいらしい村だったのだ。
ホッロークーの村人たち、パローツ人はその昔トルコの方から移住してきた人々の末裔だという。古き良きハンガリーの伝統が未だに生きている、そんな村だ。中でも特徴があるのはその建築様式。土と藁を混ぜた壁に石灰を塗るもので、白い家々が青い空に映えて大変美しい。どの家も一階部分が半地下のようになっていて、入るとひんやりする。
これらの家は博物館やお土産屋さんになっているので、私たちも気軽に中に入ることが出来る。売っているものも、伝統的な木彫りの台所用品やおもちゃなど、つい欲しくなってしまうモノが多い。
ステキなパローツ料理のレストランで、おいしい食事をとった後、村のはずれにあるホッロークー城へ行った。お城までは15分ほどのトレッキングコースになっていて、腹ごなしにはちょうどいい。お城からの風景は格別。下にはホッロークーの村が、そしてそれを取り囲むように、草原と森が広がる。吹き抜ける風がひんやりとしていて気持ちいい。
壮麗なブダペストと比べると遙かに素朴な村だが、こういった素朴な村にこそ、ハンガリーの魅力があるのかも。一日一便とかなりアクセスが悪いが、ブダペストとは違ったハンガリーを味わうためにもぜひ訪れたい村だ。
未だかつて乗ったことのないような、せまくて硬い寝台列車に揺られ、チェコのプラハからハンガリーのブダペストへ入った。
ウィーンとプラハでは結構寒い日が続いていたのに、ブダペストに来た途端、温度が急上昇。気温の差というのは結構身体に影響するものだが、私の場合は偏頭痛という形で発生する。おかげでここ数日、薬の手放せない日々が続いている。
ブダペストにはいわゆるユースホステルの他に、プライベートルームという安宿がある。これは家庭の空き部屋を旅行者に貸しているもので、簡単にできるホームステイのようなものだ。アパートの一室を何人にも貸している場合もある。国際線が到着すると、部屋貸しのおばちゃんたちが旅行者に声をかけるので、興味がある人はおばちゃんたちの声に耳を傾けるのもいいかもしれない。
めんどくさがり屋の私は、おばちゃんたちに声をかけられるのを待っていることもある。
宿探しは結構大変だ。インフォメーションデスクで良い宿が見つかるとは限らないし、ガイドブックにある情報から得たイメージと実際が異なっていたり・・・。自分の足で探すとなるともっと大変で、重いラゲージを背負ったまま一時間も街をさまようハメになったこともある。
その点、おばちゃんたちは情報をたくさん持っている。
「シングル使用で町中」を探していると告げると、一人のおばさんを連れてきてくれた。そのおばさん、ギゼラが持っているアパートを貸してくれるという。
アパートはブダ側(ブダペストはドナウ川を挟んでブダとペストに分かれている)、キラーイ温泉とルカーチ温泉の間にあった。地下鉄、トラム、バス停まですぐだし、徒歩1分圏内に銀行、スーパー、ネットカフェがある便利な環境。部屋も清潔なので借りることに決めた。
部屋で荷を解き、一休みしてから買い物。その後は寝台列車の疲れをとらなきゃ!
とさっそく温泉へ。
行ったのは伝統的なトルコ風呂、キラーイ温泉。アパートから徒歩3分、最高である。
400年以上の歴史があるこの温泉は、オスマン朝の支配下にあった時期に作られたものだという。月・水・金が女性、火・木・土が男性と使用できる日が分かれている。
中は裸が原則で、日本の温泉のようだった。
中央に大きな六角形の浴槽、ドームにあいた明かり取りから差し込む太陽光が、何とも異国情緒溢れているけれど。この横には40度と36度、28度の浴槽がそれぞれあり、サウナも異なる温度のミストサウナが用意されている。
久々の温泉に大満足。夜は閉まってしまうのが難点だけど・・・。
翌日は朝から市内を観光し、昼寝をしてからゲッレールト温泉へいった。
こちらの温泉も歴史は古く、20世紀初頭に建てられた建物はアールヌーヴォー様式で、
外見も内装も一見の価値有り。浴槽エリアは、壁や天井に貼られたタイルのモザイクが美しい。
お湯はちょっとぬるめで、36度と38度。長い間浸かっていられる温度だ。
他にキラーイ温泉と同様、温度の違うミストサウナが用意されている。
ただこの温泉、観光客が多く、みんな水着!!!
ハンガリーの伝統的な温泉は基本裸なので、私もそのつもりで行ったのに、裸だったのはハンガリー人のおばちゃんたちと私だけ。みんな水着の中裸というのもハズカシイが、そんなことお構いなく温泉を堪能したけど・・・。それはちょっと、という人は水着を用意した方がいい。
ちなみにこのゲッレールトは、プールの使用料も温泉使用料の中に含まれているので、どちらも楽しみたい人は水着必携。お風呂場の手前にはシャワーもあるので、お風呂上がりに身体を洗いたい人は、シャンプーやリンス、石鹸類も持っていった方がいい。タオルはシーツのようなモノを貸してくれるので心配ない。
ブダペストは観光ポイントの合間にこうして温泉が点在しているので楽しい。
入り比べてみるのもまた一興。
明日はどの温泉にしようかな??
一日一つの温泉を巡る、なかなかぜいたくな楽しみだ。
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