パレードが終わるとだいぶ人がいなくなって歩きやすくなった。それでも、彼は手を離そうとしないので黙ってそのままつないでいた。帰ろうか?といおうとしたとき、
「ねえ、知ってる?今、エッフェル塔のライトアップしてるでしょ?ほら?みて!それで、真ん中の展望台があるでしょ?12時になるとそこに2000年って点灯するんだって。見に行かない?今年しか見れないみたいだし、貴重じゃない?」
その楽しそうな表情にまたしても負けた。
実は少し疲れたので本気で帰ろうと思っていたのだけれど、このまま一人でエッフェル塔にいかせるのもと思い、付き合うことにした。
凱旋門からエッフェル塔が見えるのでその方角に向かって歩く。現在、11時45分。間に合うかな?急ぎ足でいくもののなかなか近くならない。あと2分、あと1分。二人で急いでエッフェル塔の前にある、シャイヨー宮の階段を駆け上がる。駆け上がった先には、点滅が始まったエッフェル塔に2000年の文字がきらきら輝き、塔の先端から白い光線が凱旋門のほうにまっすぐのび、回転を始めた。
間に合った・・・しばし、その光景に見とれていた。
エッフェル塔の入場時間はもうすでに過ぎていたので登れなかった。塔の下がどうなってるのか気になり行ってみる。入り口の先にはシャン・ド・マルス公園の緑の芝生が広がっていた。こんな夜中なのに大道芸人やダンサーの人たちが楽しそうに踊っていたりする。屋台も出ていた。そういえば、今日、何も食べていない。私はシュクレクレープ(砂糖のクレープ)を食べ、彼はチョコクレープを食べた。
芝生の上にはカップルたちが夜寝?をしている。なんだかとっても気持ちよさそう。
「僕たちも寝っころがってみようか?」
ほんとに彼は無邪気だ。やりたいことをすぐに言葉にして返事を待たずに始める。
私はとりあえず横に座った。すると
「いいから、寝てみて。すごいから」
うーん。ちょっとめんどくさいんだよななんてまたかわいげのないことを思いつつしぶしぶ寝てみる。
目の前にエッフェル塔が聳え立ち、大きな満月が塔の横で輝いていた。