全世界で愛読されている名作、
アルプスの少女ハイジ。私も同様、子供の頃手にした本から、ハイジの世界に引き込まれ、スイスの大自然での生活に憧れた。
ただどうしても、想像がつかず、理解できなかったのは、ハイジがペーターのお婆さんのために、クララ宅で出る白パンを集めていた事。
今でこそいろいろな種類のパンが日本でも製造販売されているが、私が子供の頃のパンは、食パンが一般的。
パンは白くて当然、あたりまえと思っていたので、なぜそんなに白パンにこだわるのかが理解しがたかったのである。
ハイジが故郷スイスから遠く離れ暮らした、クララが住むドイツのフランクフルトに居住するようになり、白パンへのこだわりが理解できるようになった。
白パン以外にも、黒パンと呼ばれるライ麦パンなど、パン屋には豊富な種類のパンがずらりと並ぶ。
ドイツのパンの種類はとても多く、600種にも及び世界一とも言われている。
昔ながらの職人マイスター制度が、パンの種類にも影響しているのだろう。大まかにわけると、
形状→*小型の丸いパン * 1斤ごとに販売される大きなパン
原料→*白パン *黒パンライ麦パン
に別れる。
こちらが、ハイジが集めていたブロートヒェン , (スイス、南ドイツではゼンメル)と呼ばれる小麦を原料とした 小型の白いパン。
しっかりと焼き色がつき、案外表面は固いが中は白くフワフワだ。
ハイジが白パンを特別視した気持がやっとわかった。
今でも健康面を考え ドイツ、スイス、オーストリアでは黒パン(ライ麦パン)を主に食べる習慣がある。
そのため、白パンは、健康よりも その軽やかさ、美味しさから、食楽のために食べるパンにあたり、少し心の贅沢が出来るパンなのである。
執筆された1800年代後半、やはり田舎の人々にとっては、黒パン(ライ麦パン)が主流で、そんな白パンはやはり贅沢品だったのであろう。
そんな優しい柔らかいイメージから、ドイツの朝食には欠かせず、ドイツ宿泊ホテルでの朝食にはたいていこのパンが用意されている。横からナイフをいれて2つにわり、そこへハムやチーズ、ジャムなどをのせる。
おやつがわりに、屋台ではこの白パンにソーセージをはさんでくれたり、夕食にお客様をもてなす時も、この何種もの小型パンがテーブルに並ぶ。
1つ 約30ー40セント(約40ー50円程度)。
健康指向の強いドイツ人、小麦だけの白パンよりは、黒パンが健康的と考えており、夕食には左のようなライ麦パンが常食、子供のお弁当もこのパンで作ったサンドイッチが一般的。
満腹感がえられ、消化もよく、ハムやチーズにぴったりと良く合う。表面は固くとも、中はしっとりとしており、噛みしめば噛みしめる程、深い味わい、酸味がある種も有り。ワインのおつまみにもお勧めである。
ライ麦の量が多い程、色が浅黒くなり、小麦を半分まぜたタイプはくせもなく
口当りがいい。 みかけによらずとっても美味しいのだ。
その他大麦、ケシの実、ごま、ひまわりの種、かぼちゃの種、じゃがいもなどを混ぜたりと、とにかく種類豊富だ。
日本でも健康ブームから玄米が見直されているが、こちらにも三穀、五穀パンももちろん揃っている。
ドイツの旅では、是非そんなパンの食べ比べも楽しんで頂きたい。
スイスは、相変わらずハイジの郷として観光国としての人気が高い。反面、ドイツ、フランクフルトにはハイジの足跡がない。
アルプスが見えるのでは?と登った一番高い教会の塔がどこか知りたくて以前 市観光局にまじめに聞いた事があるが、失笑された。
「あれは、物語ですから、、架空ですよ!我々の町では文豪ゲーテが生まれ、生家が残っていますのでそちらを是非!!」
はは?、恐れいる。やっぱり非現実的な事には、あまり感心を示さない国民性なのだろうか。文豪ゲーテ様より、ハイジの方が観光促進には絶大効果があると思うのだが、、、
金融街として名高いビジネスの町、そんな事はどうでもいいのかもしれない。
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●情報提供者
(株)ウェブトラベル トラベルパートナー「中島 美弥子」
ドイツ (シュトゥットガルト)在住
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