約1300年前、葛城山の修行僧、役の小角(えんのおずぬ)が、ふもとの広場で、この建物を仕上げ、法の願力によって、洞窟に、投げ入れたと伝えられています。
標高470メートルの集塊岩と溶岩との境に生じた、洞窟の中に建っているその姿を目の当たりすると・・・とにかく人間業とは思えない驚愕の建物です!
なにかの雑誌で見て、激しく興味を引かれるままに行った、鳥取三徳山投入堂。
旅行の前に、調べていたので、投入堂を見るまでの険しい道のりはある程度覚悟していたのだが、それは想像をはるかに超えていた。
小雨が降ったり、止んだりのあいにくの天気、夏まっただ中の午後だった。入山リストなるものを見せてもらうと、その日の入山者は、僕たち以外にたったの3名。
「すべりやすいので気をつけてください。」
そんな一言を、登山事務所の人に言われて、僕と僕の友達は投入堂を目指し、山を登り始めた。
最初は普通の登山道、僕たち二人は写真を撮りながら意気揚々と登る。天気が天気だったので、あたりは少々暗かったが、また、「ここは観光地です」というような雰囲気がなく、自然が自然のままにあるような雰囲気を残していた。自然の中に埋没するのは果てしなく気持ちがいい。このときは、まだこの登山道の険しさを知るよしもなかったのである。
15分程度歩いただろうところで、登山道は獣道に変わる。最初の関門である「かづら坂」が目の前に立ちはだかる。ひどく急な坂道に、木の根がうようよとはいつくばる。自然造形的には非常に美しい。観光気分であったため迂回路を探すが、もちろんない。木の根をロープ替わりにつたって上へ行くしかないのだ。すべる。服は汚れる。登りきった頃には、「旅行」が一種の「旅」に変わったことを感じた。