「地雷を踏んだらサヨウナラ」 著者:一ノ瀬泰造
カンボジアの象徴的建造物
「アンコールワット」
解放勢力側が支配していたアンコールワットへ単独潜入したまま消息を絶った一ノ瀬泰造さんのカンボジアでの生活、当時の気持ち、写真が赤裸々につづられた一冊。
冒頭は写真から始まる。
兵士と家族が一緒に写っている写真。つかの間の休暇を楽しむ兵士たちの笑顔。幸せそうな写真が続いた後は戦争のむごたらしい絵がまざまざと見せ付けられる写真。
空爆から逃れる少女、負傷し、プノンペンへ帰る船を待つ兵士。本の表紙にもなっている水田の中を逃げる政府軍兵士を撮った写真も胸を打たれる。
肝心の本の中身は泰造さん自身の日記、家族、友人、恩師へ宛てた手紙、レポートからなる。
最初はインドから友人にあてた手紙から始まる。当初はインド、タイ経由でビザを取りベトナムへ向う予定が解放勢力側にあったアンコールワット遺跡への一番乗りを目指し、カンボジアに入国する。
アンコールワット拠点の地、シェムリアップに腰を落ち着かせ、人がよく親切なカンボジア人たちと交流を深めていく。
日記や手紙をうまく配慮して構成された本だけに当時の悲惨な戦火が目に浮かぶ。戦場から直接送られてきた手紙をそのまま載せているので読みやすいとはいえない箇所もいくつかあるが、戦場の様子が伝わる。
現在は世界各国から観光客が押し寄せ簡単にいけるようになったアンコールワット。
一ノ瀬さんが行ったときはアンコールワットは遠く、自分の目で見るのはいつのことだろうか?と夢見た一ノ瀬さんの心情がよくつかめる。
「アンコールワットを撮りたい、できればクメール・ルージュと一緒に。地雷の位置もわからず、行き当たりドッカンで、最短距離を狙っています・・・」
この言葉がこの本のすべてです・・・
<一ノ瀬泰造>
1947年、佐賀県武雄市生まれ。
1970年、日本大学芸術学部写真学科卒業
UPI通信社東京支局勤務
1972年3月、ガンボジアに行き、フリーの戦争カメラマンとしてスタート。
以後、ベトナム戦争を1年間取材し、「アサヒグラフ」「ワシントンポスト」など、内外のマスコミで活躍。
1973年11月、アンコールワットへ単独潜行したまま消息を断ち、1982年、両親によってその死亡が確認された。
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